佐藤教授が、大隅良典 東工大 栄誉教授(2016年ノーベル生理学・医学賞受賞)から
「大隅基礎科学創成財団 酵母コンソーシアムフェロー」の称号を付与されました。
2020年12月、東京工業大学 すずかけ台キャンパス(およびオンライン中継)にて、公益財団法人 大隅基礎科学創成財団の助成授賞式ならびに「酵母コンソーシアムフェロー」の称号の授与式がおこなわれました。
佐藤教授は、2020年度の受賞者として、東工大栄誉教授の大隅良典先生(2016年ノーベル生理学・医学賞受賞)から「酵母コンソーシアムフェロー」の称号を付与されることになりました。
大学院生の露崎隼さんとともに開拓した分裂酵母の休眠打破機構の研究を高く評価していただきました。佐藤教授はフェローとしてこの研究を推進しながら、基礎研究の重要性や面白さを伝えるアウトリーチ活動と各界との連携を広める活動をおこなうことになります。
佐藤教授(以下、佐藤)はその昔、大学1年生の時に選択科目として「生物学」の授業を履修したところ、その教官が大隅良典先生だったのが、先生との出会いだといいます。当時の大学の授業は淡々と進める無機質な講義が多かったのですが、大隅先生の生物学講義は、大隅先生の風貌と楽しそうに自分の好きなことをひたすら語る講義スタイルに独特な雰囲気を感じ取ったとのことです。大隅先生はそのような「根っからのサイエンス好き」の先生で、決して成績評価に厳しかったわけではないのですが、残念ながら、学生本人の生物学に対する根本的な知識不足、センス不足と努力不足が著しかったために単位を得ることができなかったそうです。このことを、今でも生物学との出会いにおける最初の出来事として深く記憶しているそうです。
佐藤はその頃は大隅先生がどのような研究をしているのかを理解できるほどではなかったのですが、その後、酵母を使った研究をおこなう山本正幸先生の研究室に配属されました。あまり佐藤自身は研究がうまくいかなかったので、研究成果を学会で発表できるようになったのは大学院の博士課程に進学してから、だそうです。ある年、基礎生物学研究所(愛知県岡崎市)で開催された「酵母遺伝学フォーラム」の研究会に参加した時に、当時その地で研究されていた大隅先生にお目にかかり、あれ?この酵母オートファジーの大隅先生というのは私の大学1年のときの…と遅まきながら知ることになりました。世界の狭さと、それ以上に自分の見識の狭さを痛感する出来事でした。この基礎生物学研究所はその後、山本正幸先生が所長を務められたことで、後年また別の意味でも特別な場所となりました。
大隅先生と佐藤には酵母以外にも共通点があるなどというと大変不躾な話ですが、大隅先生も私も、卒研生のときに遠心機の使い方が悪くてトラブルを起こした、という共通点があるそうです。佐藤は当時の先生(注:前述の山本先生ではない)から酷くお叱りの言葉をいただきました。ただし遠心機を壊せば大学教員になれるという意味ではありません、大変危険ですので真似しないでください。
時が流れ、今回フェローの称号を授与されるにあたり、大隅先生から証書を手渡しされるそのとき、数十年振りにあの時の「失われた単位」を取り戻せた、そのような感慨でいっぱいだった、と述べています。
コロナ禍のため、会合は簡素化された授与のみでしたが、忘れ得ぬひとときとなったようです。
くれぐれも、大隅先生が鬼教官だったわけではないことを誤解されませぬようお願い申し上げます、とのことです。
文:佐藤政充
写真:大隅基礎科学創成財団の皆様のご厚意による(掲載の許可は得ております)
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